シムラタケシ編④:見慣れない番号

葉山

おはようございます。
今日は5時に目が覚めてしまった葉山です。

好きな時に寝て
好きな時に起きて
好きなことをする

なんて幸せで贅沢な三箇日😊

こんな日を毎日迎えられるよう
今年も励んで参ります🙏

さて、シムラタケシくんは
その後どうなっていくのでしょうか?

続きをどうぞ。



初出勤から3日後
右隣にいた男性は来なくなった。


俺はというと
渡されたリストに対して
ひたすら電話をする毎日。


話を聞いてくれる社長は一人もいなかった。


要件を伝えた瞬間に

「ウチは結構」ガチャ

こんな感じだ。


世の中は冷たいなー
と思いながら
ただただ電話をかけまくる毎日だった。


そんな中たった一人
俺の話を聞いてくれた社長がいた。

ただ、その社長は
俺の話を聞くなり

「そんな仕事やめなさい。今何歳なんだ?
今からならやり直せるから
今すぐやめなさい。」

と、懇々と仕事について説いてくれた。


事務所は常に鍵がかかり
誰もが偽名を使って働いている。

とてもまともな職場じゃないことは
頭では十分理解していた。


だけど、俺にはお金が必要だった。

今月の家賃、光熱費、返済…

自分が何をしているかよりも
今月いくら貰えるのかが
全ての判断基準になってしまっていた。


この会社がまともじゃなかろうと
俺はとにかく約束された30万円さえ
支払ってもらえればいい。


そんな考えが勝ってしまっていたのだ。


昨今、闇バイトなるものが
社会問題になっているが
その闇に手を染めてしまうほとんどが
お金に困った若い世代だという。

借金に困って…
怪しいとは思ったけど、つい

2013年に米国のプリンストン大学や
ハーバード大学の研究者たちが発表した論文によれば
貧困は人の認知能力を低下させ
IQを約13ポイント減少させる可能性があるとされている。


なぜか?


脳内思考のほとんどが
『支払い』に関することで
埋められてしまうからだ。


つまり
支払いに追われれば追われるほど
脳はそのことに囚われ処理能力が低下し


まともな判断ができなくなり
認知する力も下がってしまい
判断力や問題解決能力に負の影響を与える
ということだ。


私は大丈夫。


そんなことはない。



この問題は社会の問題ではなく
あなた自身の問題にもなりかねないことなのだ。


それだけ『支払い』の圧力はエゲツない。


貧困というのは
収入が少ないことだけを指すのではなく
支払いが多いことも含まれる。


お金の問題というのは
単に数字だけではなく
その人の心や生活全体を圧迫する。


そして、支払いに追われる日々が続くと
人はそのプレッシャーから逃れるために
短絡的な行動を取りやすくなる。



実際
俺もその時はとにかく
目先の30万円を稼ぐことしか考えられなかった。


いや、稼ぐというより『貰う』
という感覚だっただろう。


社会のこと、自分の将来、家族、友人、信念や夢――


そんなものは全部
頭の片隅に追いやられていた。


その社長が懇々と伝えてくれた

「早くやめなさい」

という言葉は、
頭では分かっていた。


でも、辞めたところで
支払い期日が変わるわけでもない
金額が減るわけでもない。

山のように積み上がっている
現実は変わりはしないのだ。


新しい仕事を探すより
今働いている分をとにかく貰うこと
これが最善だと思っていた。


だから、
最初の給料をもらったら辞めよう
という結論に至ってしまっていた。


判断力や問題解決能力に負の影響を与える
とは、まさにこのことだ。


3日目の勤務?が終わる頃

工藤から一枚の書類を渡された。

どんな書類かは忘れてしまったが
実家の連絡先などを
記入しなければならないものだった。


事務所には常に
融資のための現金が置いてあったため
持ち逃げや盗難を予防するためのもの
そんなニュアンスの説明を受けたが


俺は母親に今やっている仕事のことを
話すのが億劫だった。

反対されることなんて目に見えている。


そんな思いを抱えながら
俺はその日の夜に母親に連絡をし
仕事のこと書類のことを話した。


当然、母親からは
そんな仕事やめなさい
なんでそんな仕事してるの?
と聞かれた。


その質問に対して
なんと答えたかは覚えていないが


「分かった分かった
最初の給料もらったら辞めるから
とにかく書類記入して。」


そんな感じだったと思う。


母親に連絡して数日後

携帯に見慣れない番号から着信があった。


葉山:「もしもし?」

女性:「公亮くん?お久しぶりね
   ゆみおばちゃん、覚えとる?」

葉山:「あぁ!!ゆみおばちゃん?
   お久しぶりです!」


ゆみおばちゃんとは
母親の後輩にあたる方で
おばちゃんとは言っても血の繋がりはない。


ゆみさんは東京に住んでいて
俺が上京した時に一度だけ食事をしたことがある。


ゆみさん:「久しぶりにご飯でも行かんね?」

突然の食事の誘いだ。


葉山:「ぜひ!お願いします!!」

ゆみさん:「そうね!そしたらウチにおいで
   それからご飯食べに行こうか!」

葉山:「はい!ありがとうございます!」

食事をご馳走してもらえるのはありがたい。

俺は、最初の休みに
ゆみさんの家に伺うことにした。


ゆみさんの家は
東京タワーの近く
芝公園駅から徒歩5分くらいのところ。


俺は教えてもらった住所と
目印を元にマンションを探した。


家に到着し、リビングに通された。


どこにご飯に連れて行ってもらえるんだろうか
何がいいかな〜なんて考えていたのだが


ゆみさん:「公亮くん、そこに座って!」

リビングのソファーに座ろうとしたら

ゆみさん:「ソファーじゃない、床に正座しなさい。」

俺は訳が分からず床に正座した。

リビングテーブルの上には
一枚の紙とペンが置いてあった。


ゆみさん:「その紙に、借金全部書き出して
   人から借りてるものがあれば
   それも全部書き出しなさい。」

葉山:「え?え?借金ですか?」

ゆみさん:「私は誤魔化されんけんね
   全部知っとるんだけん
   全部書き出しなさい。」


初めてお会いして食事に行った
優しいゆみおばちゃんの面影はなかった。


続く

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